Aruyo

溺れた夢

a oneiromancy

親父が事業を立ち上げ、事務所を構えていた。 自前で建てた小柄なビルに入ると、革張りのベンチにジャケットがかけられ、少し変わった感じがするけどどことなく機能的なものを感じる什器というかそんなんが部屋いっぱいに広がっていた。

「まだ、奥があるんだぞ」

そう言って壁をたたくとせり上がり、小さな建物にはありえない奥行きに会議室みたいなものが徐々に見えてきた。 しかし、並べられた椅子はすべて一方むいている。 奥が見えてきた。 デザインはコスモなんたら世代で艦橋の司令室みたい。 ボディウムみたいな山型してるんですけど。 誰かしらん人がひとり席に埋まっていて、法壇みたいなんだが。

ど う み て も 裁 判 所。

これで会議するのか。
接客の時はクライアントを見下ろすのか。
接待だったらどっちが上手だよ。

でも、続きがあった。 ボディウムの後ろにはテーブルがいくつか、ラウンジみたいだ。 こっちのほうが会議室じゃねーか。

そこを見下ろすようにさらに奥に観覧席みたいな。 映画館にしても大きいし2階席まである。 つか、表からみたのと違ってどんだけの広さだよ。

立 派 な ホ ー ル な ん で す け ど。

「ここで、プレゼンもできるぞ」

親父は満足げだ。

「じつはもう、事業は軌道にのっててな」

親父が見せてくれるというのでガレージの前に立って待つと。 出てきたのはリムジンよりも胴長の、全輪が舵を切れる4軸車。 なんだか先が尖ってるというか艏があるよ。

水 陸 両 用 車 か よ。

河口のようなところに架かる橋のむこうに移動。 見えてきたのは新橋の駅前みたいな広場。 そこにマツキヨというかカメラ系ディスカウントみたいな一角。

「あれがそうだぞ」

みてみると、やたら賑やかな八百屋だった。 表には整然と並んだ大根...じゃなくてバニーガールがモデル立ち。 片手をあげて、顔の高さに白菜を持ち上げて微笑んでいる。

キ ャ ン ギ ャ ル 八 百 屋 か。

ああ、これは夢だ。 解っていても笑うしかない。 そのうち、高潮というか津波が来て流されそうになった。

橋を走って事務所に着いたけど、そこもキャンギャルがいた。 やっぱりモデル立ちでポーズを決めながら白菜もってにっこり。

あはははは...笑っているうちに津波に流された。 親父の高笑いが響く中、なにもかも。 もちろん、私も。

そこで目が覚めた。
今夜は白菜か。