Aruyo

AppleのPICO

AppleがPICOなる画像圧縮技術を開発したとのこと。人間が不要と感じる要素を削ぐのね。発想としては「端折る」という点では不可逆圧縮の基本とそんなに変わらないけど、AIにどの部分が人間にとって不要かを学習させたかという肝がありそう。

人間にとって不要が「知覚」という点でなら1988年まで遡るけど、MSX2+が採用したV9958の自然がモードにもそういうのがあった。通常のVDP(GPUのご先祖みたいなもん)はRGBだけど、このモードではYJK方式となり、表示する画像データを約8/15に圧縮してVRAM内に格納している。

これは、人間の視覚の性質を利用したもの。網膜は明るさを感じる細胞の数が色を感じる細胞よりも多いため、人間の目は色の変化に鈍感のため「不要な情報」として端折ることで128KBのVRAMでも19,268色を実現している。まあ、使いづらいモードだったけどね。ブロックノイズとも違う滲みたいな色化けが起きたし。

JPEGも視覚の性質を利用している点は同じだけど、量子化で均して圧縮効率を高めているので端折るのとは似て非なる感じがする。さて、PICO(でAI)が削ぐ不要素はなんだろうなあ。

しかし、これで帯域は絞れても優位性があるかちょっと謎かな。

まず、非可逆が強調されているのでオリジナルを保存しようとする要求が増えそう。JPEGもHEICも非可逆なのだけど削がれ済だと認識している人は意外と少ない。そこにAIが削ぐというプロモーションが先行したら「じゃあ綺麗な元版(JPEG)も残しておこう」となるよねえ、たぶん。

手元に圧縮前の画像をバックアップとして保管したい需要が大きくなったら、個人の平均ストレージ所有量は逆に増加する可能性があるかも。あと、AIに端折られないからという理由でデジカメが復権したりして。

iPhoneでの撮影はJPEGとHEICを選択できるけど、もしPICOが加わるならiPhoneのストレージ節約には貢献するか...いや、現在も容量不足の警告が出るまで気にしないで埋め尽くす人が普通なので貢献はしないな。PICOでよりたくさん詰め込んで破綻する人がでできそう。

教室やってると「先生、容量が足りないって出たからよくわかんないけど課金したの。でもまた容量が足りなくなっちゃって。どうしたらいい?」って相談が毎月のように来る。整理して減らそうって発想がまったく無い。整理するか上位の契約を促すと、整理は面倒だし出費の増加は嫌だというのはテンプレ。人間の性って怖い。

もしAIで「削ぐ」のが広く普及したら。デジタルカメラで撮る「画像」とフィルムカメラで撮る「写真」の区別と価値が変わる可能性もあるだろうか。実際にはフィルムにもストリップ修正や特殊加工はあるけどロストテクノロジー化することで「光は嘘をつかない」「フィルムは真を写す」に近い認識に昇格したりして。画像フォーマットが進歩するほどに写真の価値が少し増すのは面白いかもしれない。